いい加減記事が古くなったので書き直しました。
・2013/5/3 少々追記
マカロニウエスタンはだいたい皆観ているだけでテンションが上がるような味のある良い役者揃いだと思うのですが、やはり特別にファンである俳優もいます。
ニエヴェス・ナヴァロなどの女優陣は別枠として、今のところ好きな俳優といえばモーリス・ポリ、ジャンニ・ガルコ、ジョージ・ヒルトン、ウィリアム・バーガー、トーマス・ミリアン……等々でしょうか。
名前を挙げていくと他にもあの俳優もこの俳優もと本当にキリがなくなるので苦手なほどです。
そんななか私が一番好きなマカロニ俳優として迷いなく挙げるのが、ジェラルド・ハーターです。
正直に言って有名な俳優ではありません。マカロニファンなら知っているでしょうが、たとえばリー・ヴァン・クリーフなどとは人気も知名度も比ぶべくもありません。
日本語で名前を検索したところで、顔写真らしい顔写真も引っかかってきません(これは大半のマカロニ俳優に当てはまるような気もしますが)。
情報も目立つところでは海外のWikipediaのページが少々と、あとは出演作品リスト程度ですので、その辺りを含めてまとめてみたいと思います。
ちなみにネット上のジェラルド・ハーターに関する記述の少なさへの鬱憤から書いているようなものなので長いです。
いつかはもう少し読む人のことも考えた簡素なまとめ記事も書くかもしれません。
ジェラルド・ハーター

(Gérard Herter、Gerard Herter/Gerhard Haerter/Gerard Haerther/Gerald Herter/Gerhard Herter等の表記も。
日本語だとジェラルド・ヘルター、ジェラード・ハーター等の表記揺れが散見できます)
1928年6月20日ドイツ・ハンブルク生まれの男優で、マカロニウエスタンには八本出演しています。ほぼすべての作品で悪役を演じている悪役俳優です。
(5/3追記:近頃なぜか急に各国Wikipediaのページが書き換わり、1920年ドイツ・シュトゥットガルト生まれ、2007年ミュンヘンにて没、ということになっています。謎です)
ならず者の多いマカロニウエスタンにおいて、いい身なりをした貴族的な金持ち系や、士官将校などある程度位の高い軍人系を得意としています。
青い目にいかにもなゲルマン系の風貌で、背はあまり高くありませんが、中肉中背の体格がかえってそういった役柄に合っているのだと思います。
ハイソな悪役を演じさせたら、彼に並ぶのはインテリ貴族風のフランコ・レッセルくらいでしょう。今のところ私はそういう認識でおります。
先述したような地位や気品を伴う立場の、非道かつある程度底の知れた(カリスマ性のある巨悪などではない)悪役が彼の真骨頂です。
私は彼のその得意分野のはっきりとした、安定した悪役ぶりが大変に好きなわけです。
ハーターが出演しているマカロニウエスタンは以下。
1964
『アラモ砦への道(La strada per Fort Alamo)』
1966
『復讐のガンマン(La Resa dei conti/The Big Gundown)』
1967
『黄金の三悪人(Vado... l'ammazzo e torno/Any Gun Can Play)』
『黄金無頼(Professionisti per un massacro)』
『ドルの両面(Le due facce del dollaro/Poker d'as pour Django/Two Faces of the Dollar/Stinkende Dollar)』
1968
『地獄へ逆戻り(Uno di piu all'inferno)』
『脱獄の用心棒(Quel caldo maledetto giorno di fuoco/Gatling Gun)』
1970
『大西部無頼列伝(Indio Black, sai che ti dico: Sei un gran figlio di.../Adios, Sabata)』
この他にマカロニウエスタンに出演している情報は今のところ得られていません。
一番有名な彼のキャラクターは確実に『復讐のガンマン』の男爵でしょう。
ジェラルド・ハーターの名前が出されるときには、だいたい「『復讐のガンマン』であの男爵を演じた」といった注釈がつくイメージがあります。
軍服のような飛行服のような服装にマント、手袋、独自の早抜用ガンベルト、そしてモノクルを身につけたスタイルで、リー・ヴァン・クリーフ扮するコーベットとの決闘を演じたシュルンベルグ男爵のインパクトは強烈かつ絶大です。
悪役というよりは敵役という風情ですので、悪役としてのハーターのファンである私の評価順位は相対的に下がってしまうのですが、しかし大変素晴らしいキャラクターであるのは間違いありません。
そもそも『復讐のガンマン』の決闘シーンそのものが、マカロニウエスタン屈指の名決闘のひとつですし。
メインとなる悪役は『黄金無頼』の資金横領&軍や一家皆殺しのロイド少佐、『地獄へ逆戻り』の幼稚で残虐な狙撃遊びに興じるアーネスト・ウォードがまず挙がります。
マカロニウエスタンでは最後の作品となる『大西部無頼列伝』でも、これまでの役の集大成のような悪役将校、オーストリアのスキメル大佐を演じています。
なにせモノクルを嵌め、丸腰のメキシコ人を撃ち殺して遊び、軍の資金を横領する貴族趣味な将校ですから、もはやセルフパロディにも近いといえるでしょう。
『ドルの両面』ではなんと準主役というか、三人の主役のうちの一人(悪党ではありますが)ブラックグレイブ元大佐を貫禄たっぷりに演じています。
『アラモ砦への道』『黄金の三悪人』『脱獄の用心棒』に関しては、それぞれチョイ役かあまり出番や見せ場のない悪役で、いまひとつぱっとしません。
ちなみに日本語版のDVDが存在しているのは現時点では『復讐のガンマン』『黄金無頼』『大西部無頼列伝』の三本のみです。
(私がとにかく愛してやまない作品である『ドルの両面』は、長らく行方不明だったマスターフィルムが先頃ついに見つかったとのことなのですが……リリースはやはり厳しいでしょうか。
ハーターが出演していることを抜きにしても大変好みの作品で、というか実際にファンも結構多いと思われる傑作マカロニウエスタンですので、ぜひともリリースされて欲しいものですが、日本劇場未公開・テレビ未放映では一層辛いかもしれません。
現状ではDVDはエンディングが少しカット(二十秒程度ですが余韻に結構影響があります)されたフランス版(『Poker d'as pour Django』)しかありませんので、せめてノーカット版がいつかどこかから出てくれると嬉しいのですが。
『ドルの両面』は思い入れが強いので単独記事を書きたい気はするものの、なかなか手を付けられずにいます)
ジェラルド・ハーターは1959年にリカルド・フレーダ監督、マリオ・バーヴァも関わっているホラー映画『カルティキ/悪魔の人喰い生物』でデビュー。
映画への出演は1972年のルキノ・ヴィスコンティ監督『ルートヴィヒ』が最後のようです。
引退したともなにともわかりません。
ネット上にあるデータの類も、この消息不明っぷりでは正直きちんと実情が把握反映されているのか少々あやしいところです。
(ところでネット上の情報では上述の通りデビュー作は『カルティキ』と記されているのですが、各映画の情報を見ていると『カルティキ』よりも『快傑白魔』のほうが製作や公開は先では?と思われる部分もあり、この辺りよくわかりません。ご存知のかたは教えてください)
出演作品以外の彼の経歴は本当に不明なのですが、映画デビュー前はどうやら舞台俳優だった……?という記述を見かけたことはあります。
詳細も信憑性の程度もまったくわかりませんが、デビュー作が『カルティキ』にしろ『快傑白魔』にしろ大きい役ですので、それ以前から役者をやっていたと考えるのが確かに自然な気はします。
また、これも本当に曖昧で不確定なよくわからない情報なので私も頭を抱えているのですが、もしかすると絵画や写真などの芸術活動もやっていたのかもしれません。
それからなんと女優のアニタ・エクバーグとダンスをしている写真が残っていたりもします。
1958年、ローマのレストランRugantinoでのパーティーだそうですが……。
ハーターに関してなんらかの情報をお持ちの方は教えて頂けると私が大変喜びます。
出演作品データはこちらを参照(IMDb)。
ここにあるものに関してはすべて観ましたが、それ以外に出演作があるかどうかはさすがに把握しようがないので……もしも他で見かけたことがあればこれも是非教えて下さい。
なお、IMDbのリストにない作品で見つけているものは現在二本。
1961
『Viva l'Italia!』
(ロベルト・ロッセリーニ監督の作品です。
情報をフランスのデータベースで見つけて確認したところ、ちゃんと出演していました。クレジットにも名前があります。
フランス人ジャーナリストと思しき女性と一緒にいる、やはりジャーナリスト?役のようです。英語を話す設定らしいのですが彼がどこの人間なのかはよくわかりません。セリフは一言ある程度です。
軍人も貴族も山ほど出ている映画なのですが、その状況でこのひとが一般人の役というのも珍しいですね。)
1966
『続・黄金の七人 レインボー作戦/Il grande colpo dei sette uomini d'oro/Seven Golden Men Strike Again!』
(セリフもクレジットもありませんが、潜水艦に搭乗しているアメリカ海軍の大尉が彼と思われます。
ちなみにこの映画、モーリス・ポリ、ジャック・エルラン、ジェラルド・ハーターと『ドルの両面』の主役三人が揃って出演しています。ポリ以外はちょい役ですし、絡みもまったくありませんが。)
です。
マカロニ・ウエスタン以外ではマカロニ・コンバットなど戦争映画に多く出演しています。
とにかく将校役です。
確認済みの出演作品36本のうち、
1959
『戦争・はだかの兵隊(La grande guerra)』
1960
『五人の札つき娘(5 Branded Women)』
『全艦船を撃沈せよ(Sotto dieci bandiere)』
1961
『Then There Were Three』
1962
『Il cambio della guardia』
『I due colonnelli』
1963
『地上最笑の作戦(Il giorno più corto)』
1966
『続・黄金の七人 レインボー作戦(Il grande colpo dei sette uomini d'oro/Seven Golden Men Strike Again!)』
1968
『コマンド戦略(The Devil's Brigade)』
1969
『ドイツ戦車軍団撃滅作戦(Quella dannata pattuglia)』
『砂漠の戦場 エル・アラメン(La battaglia di El Alamein)』
『黄色い戦場(Fräulein Doktor)』
『激戦地(特攻ノルマンディー/Battle of the Commandos/La legione dei dannati)』
1970
『最後の戦塵(El último día de la guerra/the Last Day of the War)』
『要塞(Hornets' Nest)』
の15本で、判で押したようにドイツ軍人(一部オーストリアやアメリカ)を演じています。
ゲルマン系士官をやるために生まれてきたよう外見ですので当然の成り行きなのでしょう。
悪役というか、(物語上)観客の感情移入が想定されていない側の軍人、というポジションが大半ですね。冷徹で融通のきかないドイツ将校がパターンでしょう。
全体的に出番は多くなく、端役の域を出ないものが大半ですが、『最後の戦塵』では主要キャストの一人として、敵側の主役級ともいえる活躍を見せてくれています。
また、初期作の『戦争・はだかの兵隊』が評価されたというような記述があり、確かに出番は終盤でようやく出てくる程度であるものの、映画のラストに影響する重要で印象的な役どころだと思います。
しかし戦争物でのハーターも大変安定かつハマり役で素晴らしいのですが、面白みがあるかというと、まぁそんなにありません。
やはりジェラルド・ハーターにはもっともっとマカロニウエスタンに出演して、いかにもマカロニ的なインパクトや存在感のある悪役・悪党をよりたくさん演じて欲しかったと、心から思います。