2015年09月06日

【二日に一本てのひら百合】2015.09.06 いちばんになりたくない



「明日の晩御飯どうしようかね」
 煙草に火をつけながらユズキが瀬奈に聞く。瀬奈は爪磨きをしている。
「あ、明日は私、綾ちゃんとデートだから。いいや」
「そう。ならあたしテキトーに済ますわ。ご飯は炊いとく」
「ありがとー」
「綾ちゃんとは上手くいきそうなの?」
 煙草の最初の一吸い、深く肺まで吸い込んで煙を鼻から出す。
「うーん。どうだろ」
 ヤスリで削り出された爪の粉、唇をすぼめてふっと吹き飛ばす。
「綾ちゃんはね。ユズキのことはもちろん言ってあるし、それでも良いって言ってくれるけど……でもどうかなー。あの子、誰かの一番になりたいタイプなんだよね。フツーのことだけどね。だから最初はよくても、そのうちダメになっちゃうかも……経験則的に」
「アンタの一番にしてあげればいいじゃん」
 指先で煙草を叩いて灰皿に灰を落とす。
「綾ちゃんのことは超好きだよ。でもあの子、やっぱユズキが私の一番だと思ってるからなー。信じてくれないだろうなーって」
 荒く削った爪を爪磨きで滑らかにする。
「なんか皆そう思うよね。嫌なんだけど」
「まぁしょうがない。フツー一緒に暮らしてる相手がそうだと思うもん」
「あたし誰かの一番とか唯一とかそういうのに絶対なりたくない」
「そういうユズキだから、こんだけ長く暮らせてるんだと思うよ私。そんなの今までユズキだけだなーあなただけよー」
「やめて」
 心底嫌そうなユズキの煙草は二本目になって、楽しげな瀬奈の爪は磨き上げられてぴかぴかしている。

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posted by 伊西殻 at 18:53| 【二日に一本てのひら百合】