2015年08月15日

【二日に一本てのひら百合】2015.08.15 ゲリラ豪雨



 すごいよーすごい雨だー。 と、佳奈という女がわめく。困っているようでどこか嬉しそうでもある。
 傘、ほとんど役に立たないよ、これ。 と、七花という女がぼやく。本当にうんざりしている様子である。
 彼女たちは同じ会社の違う部署に勤める同期の仲で、よく同じタイミングで退社し、駅までの道を共にする。裏を返して言うと、それ以外での接触や交流はほとんどない。
「にわか雨? 通り雨? にわか雨と通り雨と夕立ってどう違うの?」
「知らないよ……夕立は取り敢えず夕方に降るやつでしょ」
 雨の中に片手を差し伸ばして問う佳奈に、七花は眉間に皺を刻んで答えながらも、鞄からスマートホンを出して指先でくるくると弄り出す。
「んー……おんなじ? みたい? たぶん。違うような同じなような」
「なにそれー。調べてるの調べてないの」
「調べてるけどよくわかんないんだってば。……あー、通り雨は正式な気象用語とかとは違う? みたい?」
「なんでもいい! ゲリラ豪雨!」
 佳奈が閉じた傘を雨の中に向かって突き刺す。危ないからやめて、と七花が制する。
「で、ゲリラ豪雨っていうのは結局なんなわけ」
 大人しく傘を引っ込めて、佳奈は自分の使った言葉を七花に尋ねる。
「それも一緒なんじゃない? にわか雨のすごいやつ? よくわかんないけど」
「じゃあ今のこれがそうでいいんだよね? 急にバーっ! ってものすごい激しいの」
「短い時間だけのね」
「なんでそれがこのタイミングでくるかなぁ」
 面白いけど困ったね。 と、佳奈がぼやく。
 アンタと帰りが一緒になるとき私はいつもこんな感じだけどね。 と、七花が胸の内だけで思う。

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posted by 伊西殻 at 20:11| 【二日に一本てのひら百合】