2015年08月13日

【二日に一本てのひら百合】2015.08.13 対の猫



 艶やかな黒い猫が居る。後頭部の丸みは品が良く、うなじのくびれと背骨の山がはっきりS字を描くのに、背筋はまっすぐ伸びて見える。前脚は実際まっすぐで、指の膨らみがちょこんと揃う。黒猫らしく毛は細く柔らかで、部屋の灯りの下でつやつやと光る。
 艷やかでない黒い猫も居る。頭は妙に大きく、脚も短くずんぐりしていて、未去勢の雄の成猫ほどではないにせよ顔も潰れたように膨れている。清潔にはしてあるが、毛皮はごわごわしている。
 彼女たちは同じソファに並ぶ。艶やかな猫は脚を伸ばして座り、艷やかでない猫は目を閉じて自分の毛繕いをする。自分の腹を舐め股を舐め腿を舐めて脇腹を噛む。それからごく自然に、すぐ隣りに居る艶やかな猫の背中を舐める。舐めながら身体を起こして、後頭部まで丁寧に清める。
 チャッチャと首輪の金具が鳴るかすかな音がする。
 艶やかな黒猫はじっとそれに身を任せながら、美しいものを見るときの揺らめきを緑の瞳に灯して、艷やかでない猫を見つめている。

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posted by 伊西殻 at 18:53| 【二日に一本てのひら百合】